蠱惑なる血の記憶(イヴとのRP履歴)
邪魔なら、消してしまって構いません
『貴方の大好きな血は此処にあるわ……遠慮せずに飲んでちょうだい…………くぅ、ん♥』
首を飾る邪魔な衣服を引き裂き、幼い少女は透き通るような白肌を曝け出す。傷付いた吸血鬼を抱き寄せての誘惑
他人の牙を受け入れた事がない柔肌、しっとりと汗ばむ首筋は下拵えされた極上の肉にも似た味わいを連想させた
死の影すら見える飢え乾きが苛むこの状況、我慢など出来るはずもなく。蠱惑的に淡く光る皮膚へ、真珠色の牙が突き立てられる
鋭い牙が少女の皮膚を抉り、血液を流出させる。脳髄まで犯されそうなほどに濃い血の匂い、舌で傷口を舐めしゃぶる度に喘ぎを漏らす
人間には理解できない、吸血種特有の味覚。全身の細胞が満たされ、生命として充足される久方ぶりの多幸感
濃厚にして芳醇な血の香り、絡みつくようなコクを取り込まれた肉類が醸しだし、野菜が諄さや臭みを全く消している
それでいて飽きの来ない甘く複雑な香気は、彼女が嗜むハーブティーに依るものだろうか。被虐に悶える少女の艶声もまた良い
官能的な快楽の伴う吸血、天上に存在する湧き水めいて留まらぬ命の本流。瞬く間に躰の傷口は塞がり、本来の力を取り戻していく
『……ぁ、ん♥ …………もぅ、問題ないわね……ふッ♥』
『さぁ…………貴方の妹が天守閣で待っているわよ……行きなさい…………』
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生きとし生けるもの、永き生の中には自身の在り方すら変えてしまう出会いが幾つもある
合理を突き詰めた流麗な剣戟は可能性に満ちる少年を魅了し、血腥い剣の道へと駆り立てた
永遠に続くお伽噺話。か細い指で頁を捲る少女は何時しか自らの力で不可思議を創り上げていく
錬金術師の深淵に沈んだ不完全な器が、優しい忘却を以て小さな命の火に気づき虚ろより歩み出す
そして、傷つき餓えた吸血鬼は舌先に絡みつく濃厚にして芳醇な少女の血の香りに蠱惑され――――
『んっ、ふぅん……はぁっ……ぁん……もう……いいかしら♥』
大きな寝台に腰掛ける幼い少女の、血を浚った指先を小さな口に含ませる紅き悪魔の吸血鬼
淡い灯りに照らされた闇夜の個室。深く刻まれた傷口に舌を這わせ、官能的な血の快楽に耽る
傍らにぺたんと座ったまま、べえっと赤黒い血塗れの舌を出す。融けた朱の宝石を貪るが如く
レミリアは口を開いたまま、イヴに見せつけるかのようにゆっくりと舌を口内で這い回らせた
濃密な血液を舐め転がし、甘き鮮血が紅舌に淫らがましく纏わりつく。誘惑は酷く、殆ど無意識に
『ひ、ぁんっ♥ ……ふ、っ…………えぇ……いつも、ありがとう……んっ♥』
錬金術師と吸血鬼の戯れめいて奇妙な逢瀬は、艶濡れた唇が零す惚けきった淫猥な言の葉で終わりを告げた
秘めやかに幼裂を嬲り、無心で血を舐め、深い法悦を味わい尽くし。それでもまだ足りず、しかし引き際は弁えて
夜の一族は自らの心の臓、或いは貴重な高位吸血鬼の牙や血液を与えて立ち去る。利益で雁字搦めに、焦る必要はない
どうしようもなく、はしたなく瞳を潤ませ蕩けきった視線を向けて、汗みずくの痴態を晒す少女を目撃すれば尚更だろう
くすくすと部屋の隅で色のない淫婦の魔性が嗤う。純粋無垢な少女たちが堕ちてゆく様はまた何とも言えぬ愉悦を齎して
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蒼き冥灯揺らめく小さな居城の一角。永遠に紅い幼き月、吸血鬼が開く真夜中のお茶会
魔の力宿る蝋燭の僅かな光を頼りにして、ティースタンドの甘やかな焼き菓子を摘んでいく
品を損なわない程度に彩られたテーブルを囲むのは二人。一人は人形めいて可愛らしい幼い少女
瑞々しい果実を思わせる白肌は抜けるように透き通り、内で脈動する生命の奔流は夜の者を蠱惑する
嫋やかな仕草で白いカップの縁に口づけて、濃厚にして芳醇な鮮血が一滴だけ注がれた紅茶を味わう
もう一人は蒼みがかった銀髪に紅き宝石の如き瞳を携える、赤いリボンを随所に結んだ白いドレスの幼き少女
妖しい微笑みを絶やさぬ吸血鬼らしい吸血鬼。悪魔染みた大きな翼は茶会を愉しむようにやんわりと羽ばたく
自信に満ち溢れた尊大な態度、誰でも変わらぬ強者然とした言葉遣いは一種のカリスマすら感じるもの
一頻り親交を深めた後、運命を転がすために魅惑的な獲物であるイヴへレミリアが話を切り出す
『それじゃあ、今後はレミリアさんも依頼に参加したりするのね』
『面白いのは間違いないけど、厄介事に巻き込まれる可能性も高いわよ』
錬金術師の琥珀色の瞳を見据え、狡猾で計算高い吸血鬼が静かに言葉を紡ぐ
忌まわしく陽の光への対策が出来上がり、昼であろうと活動可能になった故
退屈しのぎに依頼の参加すると宣言した。狩りを行うには何もかも足りないのだ
幼い少女を手に入れるために、我儘で飽きっぽい子供らしい態度で本質を隠す
砕けた口調と茶目っ気まで織り交ぜて。獲物に好かれやすい己を演出する
――――――愉しげな宣言から暫しの時が経ち、丑三つに差し掛かる頃合い
錬金術師の少女はいかにも柔らかそうな幼い頬を、浮かべた紅潮の色を深めていた
まるで熱にでも浮かされたような、甘ったるい酒気に当てられたかのような酩酊感
獣欲垣間見える誰かが椅子から立ち上がり、音もなく近づいてきたことさえ気が付かない
ふわりと匂い立つ雌の香りがまた何とも心地よく。吸血鬼は夢心地な獲物に撓垂れて囁き
『えぇ……ん、ちゅ…………どうしたの……血が欲しい? …………いいわよ……んむっ……♥』
可憐な桃色の唇を割り開かれて、吸血鬼の長い舌が無理やりに少女の口腔へと滑り込む
敏感な口腔粘膜を舐め尽くすように舌は口内を這い回り、イヴはそれを受け入れざるをえない
柔らかな舌肉があえかに水音を立てる度、小さな錬金術師のか細い肩がぴくぴくと震えを帯びる
やがて朱い舌が少女の舌先を掬い上げるように絡め取れば、幼気な腰付きがぴくんと一際大きく跳ねた
続け様にぴちゃぴちゃと淫らがましい蜜音が高らかに奏でられ、二人は口腔の深いところで口付けを交わす
真珠色の鋭い牙が二人の舌肉を切り裂く。溢れ出した躰を蕩かす蠱惑の鮮血を縒り合わせ、擦り合わせるように
雌の粘膜が撫擦される感触に淫らな欲求が沸き起こり、舌と舌は互いにたっぷりと柔らかな血肉を睦み合わせた
夫婦もかくやという愛欲の営みは誰にはばかることもなく繰り広げられる。夜を統べる者にのみ許された魅了
両者のものがたっぷりと混ぜ合わさった唾液の糸を引きながら、濃密な血に塗れたレミリアはイヴの唇を開放する
零れた吐息は熱っぽくて甘ったるい。夜の一族を誘うには十分すぎるほど色めきだって。しかし、引き際は弁える
『……ッ、ふっ♥ ……もういいの? …………なら、イヴは帰るわ……お願い……また、ッ♥』
幼い錬金術師は濡れそぼつ淫花から蜜を染み出させながら、吸血鬼の転移能力で直接自室へと帰る
総て疑問は霧散し、するりと心を侵していく。魔性の存在が嗤う、今宵のお茶会は終わりを告げた
吸血鬼と錬金術師がこの先どのような関係となるか。それは絡み合う運命だけが知ることであろう
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桃花の髪から滴り落ちる雫は清らかな朝露か、異種を誑かし惑わす甘やかな蜜か
触れれば解けてしまいそうなほどに繊細な肌身。水伝う刺激にも火照りを帯びて
蠱惑的な香を燻らせる矮躯は、妖艶と表現しても差し支えない魅力を醸し出す
儚くか細い幼気な印象に退廃を想起させる淫靡な気配が混在した齢十程度の少女
純粋無垢な躰を穢し堕とすかの如く刻まれた、淫猥極まりない獣の紋様が背徳を誘う
秘めた情欲と熱を冷ますために、温かな水面へ沈み込ませていた脚をゆっくりと動かす
屋内水泳場の片隅。忌まわしきモノの母たる存在、恋する乙女は独り物思いに耽る
『……………………いいわ…………レミリアさん……私は貴方の在り方を尊重する』
その運命司りし聖なる杯に口付けて、内に湛える熱い血潮を貪り尽くすことができればどれほど良いだろうか
脳髄を蕩かす芳醇な匂い。幼き故に引き立つ官能的な肢体。形振り構わず真珠色の牙で引き裂きたいとすら想う
ぐつぐつと煮え滾る、人とは異なる本能。いつの間にやら傍に佇む親愛なる吸血鬼へ、彼女は一つ言葉を紡ぎ出す
慎ましやかな膨らみの中心に手を添えて、今現在も胸の奥で脈打つ赤き果実を捧げることくらいは可能だと言う
劣情めいた欲求に揺れ動く狡猾な吸血鬼は、改めて理解してしまう。少女は究極的に途方も無く都合が良いのだと
全面的な肯定ではない。生命の総てを選択せず、飽く迄替えの効く心臓を差し出すのが、その証拠である
根本的な否定ではない。天敵種の捕食行動さえ容認する態度、根絶の意思など微塵も感じさせない
互いの在り方を理解し擦り合わせ、この生命溢れる世界で生きやすく心地の良い妥協点を見出す
尊重、これは都合が良いという他あるまい。全否定からの絶滅戦争はない。何れ破綻する全肯定ではない
『あぁ…………でも……どうせなら、一泳ぎしてから食事にしない?』
生命の錬金術師たる少女は決して愚者ではない。敢えて都合の良い振る舞いをしているに過ぎず
自ら鳥籠へ飛び込むこともあれば、齎した利益の分だけ見返りを求めることもある。親愛の他に打算
上気したような赤い色が俄に散りばめられた幼躰は、淫らな期待感があからさまに現れており
遍く彼女の総てを含めて、此れには血を喰らう魔性も敵わないと言った様子で。気持ち良く笑顔を浮かべる
無意識か意図的なのかは不明だが、わざわざ水場に吸血鬼を誘い込む強かな部分も好ましく想うようで
――――親愛なるイヴの、覗きが趣味となりつつあるいけない子供に配慮する余裕すら出来たという
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苔生した巨大な木々が驕り高ぶる愚者を拒むかの如く聳え立つ、鬱蒼たる森の深奥
滾々と湧き出る小さな泉は厳しい大自然を生きる獣たちに一時の安らぎを提供する
波一つ立たぬ水面に欠けること無き月が影を落とす頃合い。夜闇孕む風は心地よく
伝承に謳われる悪魔めいた羽を揺らす幼い血鬼は、ともすれば泉の妖精をも幻視させ
弧を描く唇から真珠色の牙を覗かせる彼女。月明かりに濡れる少女贄の白肌を愉しむ
その姿は正しく獣。原初の本能、血族の欲望に身を任せて、素敵な月夜に耽溺していく
『ふぅっ♥ ……んむっ、んっ♥ ……ちゅ♥ …………♥』
火照り解ける処女の雪。月光灯る柔らかな少女贄の肌身は吸血鬼の躰に吸い付くよう
透き通るような日光拒む肌と重なり合う。甘い口付けを交わしながら、幾度も絡み合う
互いに抱き締めるようにして、深く粘膜交接を行えば、口元から鮮血が零れ出していく
紅舌を切り裂いて血塗れの睦み合い。少女贄と夜の眷属は血液を介して深く深く繋がる
淫靡なる魔性とはまた異なる捕食行動。捉えた獲物の魂まで貪り尽くす、最上の晩餐会
糸引くほどに濃厚な秘花の淫蜜を掬い取り、見世物染みて指の先から舌の上に垂らし味わう
魔の魅了に絆された贄なる少女の羞恥を煽るかのように、一度口付けを辞めてからの行為
幼気な躰が益々朱色を帯びていく。蠱惑的な肢体を悶えさせて、抗い難い誘惑香を滲ませてゆく
血に飢えた夜獣は一段と、妖艶な微笑みを深める。蕩けた贄も受け入れるように幼躰を差し出して
『――――っ♥♥ …………二人っきりのっ♥ ……時だけ、よ♥』
蛮族の里より遠く離れた泉での出来事。凡そ夜の一族でなければ、到達し得ない場所での交わり
胎の子を除けば、正真正銘二人だけの世界――――否、闇夜に愛された者はもう一人存在する
イヴとレミリアを彼方から見る赤い瞳。七色の結晶体を吊り下げた、特徴的な羽を暗く輝かせて――
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七色の結晶体が実りし靭やかな枝めいた翼。羽ばたきに合わせてゆったりと、澄んだ音色を奏でゆく
紅を基調とした豪奢な調度品の並ぶ廊下、貴種住まう古屋敷の如き場所を音も立てず歩む影無き少女
外界に接続された硝子窓の向こう側は、数百の時を生きる魔の心中を表すかのように酷く荒れている
叩き付けるような雨音。大気を引き裂く雷鳴。複雑な感情を喚起させる、蠱惑的な芳香を追い掛けて
永き生を貪る吸血鬼にとっては刹那の時間。香り途切れて、美しい無垢材の木製扉が目の前に現れた
夜の魔は深く息を吐き出して、心魂を落ち着かせる。僅かな時を重ね、意を決して扉に手を掛け――
『――――……私の落ち度、ね…………ごめんなさい、フランドールさん』
神すら焼き焦がさんばかりの熱量を帯びる、裏切りの黒き魔杖。携えるは真を知らぬ無粋で小さな夜の闖入者
嘗て伯爵に屈した未熟な己を奮い立たせんとするように。白き夜会服を纏う、未だ純粋無垢な彼女に力強く問い質す
困惑を滲ませる、黄金の杯たる少女贄。口閉ざすその姿に、何か勘違いでもしたのか。あわや戦闘になりそうという処で
血に魅入られし姉なる鬼が今宵この時の茶会に参加するよう促した。尊大で傲慢な、吸血鬼然とした威厳在る言葉使い
素敵なお茶会を台無しにした者は誰か。言い訳染みた主張は聞かない。故に、このような行動を取った理由を逆に問うて
総てを壊しかねないほどの激情が冷えたフランドールから話を聴けば、何ということはない。原因はイヴの側にあったのだ
血の盟約を結んで無ければ、況してや眷属化もしていない。何度も牙を突き立て施す、入れ墨の如き特別な獲物の証さえ存在しない
全く以て綺麗な躰。穢すべき純粋無垢な少女贄の姿は、常識的な吸血鬼からしてみれば、不気味なほどに姉との関係性が読み取れない
此れでは幾ら姉が説明しても納得できないだろう。血喰らう相手には烙印を刻むのが種としての習わし。横取り等の干渉を防ぐ役割も持つ
お互いに都合の良い、レミリアとの二人でほぼ閉じた関係を築いていた幼い少女の落ち度。異なる種族の文化を理解する努力を怠った結果
ガイアレス伯爵の一件もあり。催眠洗脳すら想起しかねない不透明。蠱惑的な、朱き宝石めいた血液に魅了されただけだと誰が想像できよう
『……それじゃあ…………たくさん、お話をしましょう……レミリアさんとの関係、イヴのことについても説明するわ』
新たな仲間を加え入れて、永い夜のお茶会は続いていく。自身の短絡的な行動を反省し、身を縮こまらせて、しゅんとする妹吸血鬼
血に夢中で妹との交流を疎かにした己にも責任があるのではないかと思いつつも、威厳を絶やさぬように朱血混じり紅茶を楽しむ姉吸血鬼
数百年の時を生きる夜魔からして見れば、未熟も未熟な錬金術師。最も年若き贄は彼女が理解、納得できるような説明を懸命に紡いで――――
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シャンデリアと俗に呼ばれる豪奢な硝子の照明器具が、仄かに朱を基調とした部屋の内装を浮かび上がらせている
幾何学模様にも通じる緻密に計算され尽くした複雑な光の調和は、絢爛なる調度品の魅力を引き出す祝福めいていて
秘密のお茶会を彩る一要素と相成りゆく。花開くように膨らみ、湯気と共に芳醇な香りを辺りに漂わせる一杯の紅茶
満月を映し出す清らかな泉の如く、水面に幽かな光を受け止める液体。純朴な魔導人形が、緊張で思わず身体を強張らせた
職人芸が随所に垣間見えるテーブルを囲む、四人の可憐な少女に促されるまま、今宵の主役である少年が紅茶に口を付ける
美味しい。自然と溢れた、素直な感想。穏やかで優しく柔らかな風味。決して不快ではない、紅茶独特の心地良い渋み
蒼みがかった銀髪の吸血鬼に勧められ、温かな白乳をティーカップに注げば、母を思わせるようなまろやかな味に変化する
月明かりが差し込みそうな真夜中のお茶会に相応しい装い、白蝶の夜会服に身を包む彼女が彼の小さな初体験を見守る光景
母親同然の幼気な少女、イヴに誘われて。ナナシと名付けられた少年は少しずつ、産まれ落ちた世界について学んでいく
『レミリアさんとの関係性、ね。お互いに都合が良く利用し合う者、と一言で片付けられないくらいには複雑……だと思うわ』
金糸の髪を揺らす吸血鬼が心地良さげにゆったりと羽ばたき、七色の結晶体を以て奏でる澄んだ音色を聴きながら、暫し歓談した後の事
ぼちぼち数杯目の紅茶を飲み終えた魔導人形の少年が、十数年来の友人めいて会話をする蒼銀髪の吸血鬼と幼気な母に一つ訪ねてみる
改めて、言われてみるとどのような説明をしたものかと。少しだけ困ったような顔をして、息子にも似た少年への返答に迷う幼い少女
淡い酒気と蠱惑の朱血交えた特製の紅茶を密かに嗜んでいた姉なる蒼銀の吸血鬼が潤った喉に飽かせ、代わりに諳んじるかのように応えてしまう
頬に上気したような赤い色を散りばめ、貴種染みた迂遠な表現の多用をして。掛け替えのない大切な人、愛すべき獲物であると強く言葉を紡ぐ
がつんと頭を殴り付けられたかのような衝撃が、魔導人形の少年を襲う。吸血鬼とは聞いていたが、此れほどまでに価値観の違いがあるのか
微かな火照りを帯びて、赤らめた顔を俯かせる幼気な母は既に異なる種族の感性を自分なりに受け入れて、好意的に思っているのだろう
ナイトキャップを彷彿とさせる、浅めの白い帽子を被る妹の吸血鬼は嘗ての勘違いしていた己を何処か思い出すのか、頭を抱え込み悶える
血に酔い痴れて興奮気味に語る彼女の姿は何処か、伝承に綴られる吸血鬼の妖しい魅力と上位捕食者特有の恐れを孕んでいるようで
純朴な少年は溢れ出す鮮血の賛美をただただ聞くしかできなかった。羞恥さえ込み上げてきた妹が止めるまでその愛の詩が途切れることはなかったという
『えぇっと……こほん…………まぁ……異なる種族故の変わった関係を形成している。と、思ってもらえれば非常に助かるわ……えぇ』
姉の痴態を必死に止める妹のおかげで冷静になったのか。示し合わせたかのようにこほんと一つ咳払いをして、蒼銀の吸血鬼と幼気な母は回答を締めるのだった
知性在る生命を至上の獲物と定める吸血鬼が産み出した文化の一欠片。恋愛関係とはまた別の、大好物に注ぐ矛盾無き愛に程近い夜魔の感性
――――魔導人形の少年が知るのは後のことだが――倒錯的な性行為も豊かな食事を彩る要素として取り入れて、心底退廃を愉しむ価値観
キャラバンの中でも特に多く種族と関わる、穢すべき純粋無垢な少女贄と過ごすのであれば、必ず適応しなければいけないだろう
バツが悪くなり、秘密のお茶会は質問が終わって直ぐに終わる。魔導人形の少年、ナナシは此度の出来事をゆっくりと咀嚼していく
良い経験となった。あぁ。最後の参加者、四人目の淫靡なる元吸血鬼の霊障がいなければ、純朴な少年の心は健全に成長を遂げたかも知れない
異なる種族との間に形作られた、都合の良い関係が嫉妬心を煽る。心の隙間に入り込む囁き声。特別な間柄とは斯くも甘美な魅力を放つ
我が子のように世話を焼いてくれて、最初の陵辱から雄としても意識してくれて。されど、恋も愛も曖昧な少年は秘めて満足できずにいる
恐らく未熟な彼が抱く想いは真っ当な子供らしいもの。妹や弟が産まれたような、己以外の関係性を強く自覚させられた故の過剰反応
下の子に母親を取られた幼子が関心を引こうと行う悪戯めいた。もっと、自分を見て欲しいという願い。霧裂く愛し子も抱く当たり前な――